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				  パーティーもそろそろ終わりに近づき、人もまばらになってきた。 
				 英語にも少しはなれてきた緩みか、アメリカ人と軽口を叩くことも出来るようになった(実際はどうか知らないが、意識の中では軽口を叩いている気分であった)。 
				 最後に大柄でスーツを着た紳士がプレ・サポート受付に現れた。 
				 以下の会話は、私がその紳士としたと思われるものである。(少なくとも、記憶の中ではこうなのだ) 
				
				「プレ・サポートしたいのだが?」 
				「プレ・サポートを感謝します。ここにお座りください」 
				「ここでいいのかい?」 
				「もちろん、結構です。」 
				 
				 彼は申込書にペンを走らせる。 
				
				「どうか2007年に日本に来てください」 
				「おお、時間とお金が許せば行きたいね」 
				「そうですか、来日はやはり難しいですか?」 
				「簡単ではないね。しかし、私は日本に興味があるから、行ってみたいとは思うよ」 
				「日本に興味がありますか?」 
				「ああ、日本の翻訳家も知っているよ」 
				「誰ですか?」 
				「ミスター・ウチダ、あと何人かだよ」 
				「内田昌之? 詳しいですね〜〜〜〜」 
				「そうでもないさ」 
				 
				 なかなか貫禄がある紳士は5分程の会話で去っていった。 
				 私は温和そうな紳士との会話に満足していると、近くで会話を聞いて村谷さんが背中を突付く。 
				
				「何ですか?」 
				「白土さん、今の人知ってる?」 
				「ええ、知りませんよ。でも、なかなかの人物みたいですね。物腰柔らかいわりには、貫禄あったし……」 
				「そりゃ、そうですよ」 
				「ええ、村谷さん、今の人、知ってるんですか?」 
				「知らないけど、ネームプレート見て分かりました」 
				「誰です?」 
				「マイク・レズニックさんですよ」 
				「へ?」 
				「………………」 
				「って、「キリンヤガ」の? マイク・レズニック? ええ! マイク・レズニック!!!」 
				 
				 しまった! 気付かなかった! 
				 会った作家さんと握手する筈か、レズニックで失敗するとは! 
				 最後の衝撃を最後にパーティーは終わっていった…………。 
				 あとは寝るだけ、シカゴの夜はふけていくのであった(やや講談調にて) 
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